かもめブックス

当たり前のように都心に向かっていた頃にはなかった高揚とともに中央線を降りた。春から小田急線に揺られる毎日になり、コロナの影響もあって、1ヶ月ぶりの東京行きの快速となった。それまでほとんど東京の中だけを移動していた人間だったので、気に留めていなかったのだが、おそらく中央線は小田急線より車内が広い。東京はやはり人が多いから、その分広く作られているのだろうか。車内が広いとか、建物が綺麗というので、それに伴い、そこに住む人間も魅力的に見えてしまう。上京したいという気持ちはここからくるのかもしれない。

新宿、四ツ谷飯田橋と乗り継ぎ、母校を左に見ながら、神楽坂のかもめブックスという本屋まで歩く。この本屋の店内には、カフェや個展スペースがあるため、コーヒーを飲みながら買った本を読んだり、本を選びつつ絵画を鑑賞できる。そして、ここには「文芸」とか「新書」といったジャンル別の本棚がない。だから、とにかくふらふらと本の間を彷徨うことができる。panpanyaの新作の漫画を買い忘れたことを若干後悔しつつ、30分くらい見てから、店を出て、結局その後、新宿の紀伊國屋で千種創一の歌集を買った。個人的にはコードが載っているWEBデザイン系の本を探していたが、また別の機会にそれ専門の本屋へ行こうと思う。

自室はまだ仕事から帰ってくる場所という感じが抜けないので、土日は東京に帰る。ほんの2ヶ月前までいた場所なのになんだか離れた存在になるのが不思議だ。若いから、元気があるから、まだこれからだから、という歳を重ねた人の声を真に受け、新しいことを吸収しようとしているが、とはいえ、これまで何をやっていたかを確認することは、健康のために必要だと思って、意識的に家へ戻るようにしている。

振り返れば、これからの生活が、予想にほとんどなかったことばかりでできている、ということと、会社の上司のマネジメントほど屈強なものはない、ということを学んだ。だから現状はまあまあというか相当、うまくいっているほうなのではないのか、と勝手に思っている。あんまり期待しすぎもよくないのだが、なぜか期待を強いてくる人が多いので、何かに期待せざるを得ないのも良くないところだ。大学を出た後の学問とは、当たり前だと思うものが、いかに当たり前ではないかを学んでいく、ということになるんだろう。