就活、コミュニティ

金曜の午後に散歩していたら、中学の頃の友達の家の前まで来たので、久しぶりに会おうとインターホンを押した。待っていたら、せめて5分くらい前に連絡をくれ、とさっきまで寝ていたらしいパジャマ姿の友達が玄関から出てきた。結えるほど長かった髪の毛がばっさり切られているのを見て、やっぱり会うなら事前に連絡すればよかったと思った。その友達は大学院の研究でいつも船に乗って海に出ていたので、引っ越す前はなかなか会えなかった。だから、今回もなんだかんだ家にはいないだろうけど、家の前まで来ちゃったしとりあえず、でインターホンを押したのだが、さすがにコロナの影響で家にいるらしい。

お互い暇なので、近くの公園まで歩こうということになった。友達は今、研究をしつつ就活もしている、とのことだった。どんな仕事をしたいのと聞くと、化学系の業界だと答えた。研究のフィールドである海や水に関係する仕事に就きたくて、海を汚しているのは洗剤だ、となり、そういう業界を志望しているらしい。それを聞いて、考え方が半年前の自分にそっくりだと思った。僕の場合は、数学を勉強してたから数値シミュレーションを使っている仕事で、宇宙開発にも興味があるからメーカー系エンジニアと、そんなふうにどこぞのエントリーシートを見ながら志望動機を出現させたのである。そういえば、これは就活以前の話かも知れないが、その友達は海で、僕は宇宙で、なにか壮大なものに惹かれるのも似ている。

うまくいけば、秋頃に内定が出るそうだが、いずれにせよ彼は大学院卒のそれなりに有名な会社の会社員になるんだろう。どこに行っても朝起きて会社に行くのは変わらないし、大企業であればあるほど希望の部門には配属されにくくなるよ、などと入社4ヶ月目なりのアドバイスをしたが、今まさに渦中にいる彼にそんな正論をぶん投げてもしょうがない。就活話から、小中の頃の友達はどこそこの会社に行ったとか、そもそも昔の友達に全然会わなくなったとか、3年後、5年後の夢とか恋愛とか結婚とかはどうしようという話を繰り返して、気がついたら公園を通り過ぎ、街一周分を歩いて帰ってきていた。

突然だが、最近、漠然と人々はどう繋がるのか、どうやったらコミュニティが形成されるのか、公共空間とは何なのか、などといった問題に興味が出てきている。きっかけはさっきの友人の就活話もそうだし、家に帰ったら集中力が切れて、連休中も何もしない、というエンジニアの鏡のような会社の先輩がいることや、仕事中は仕事以外の話をしないあの社会人特有のコミニュケーションの希薄さからくるものかもしれない。自分の勉強してきたことが当たり前のように勝手に武器に変わって、就活で「勝たされてしまう」この希薄なサイクルの先で、どうやって我々は人間らしい生活を復元するコミュニティを見つけるのだろう。文字に起こすと23の人間が抱きそうなぼやんとした疑問であり本当に恥ずかしい。そしてまた懲りもせず壮大なことに惹かれ始めているのがよくわかる。